Mes-nomura
学園前アートウィーク2015 アートディレクター
野村 ヨシノリ
(奈良アートプロム 代表)

縁あって、奈良市学園前という高級住宅街において、若く意欲的な現代美術家達を呼び込んだ【学園前アートウィーク2015】の立ち上げに関わる機会を頂いた。
このプロジェクトは2つの美術館と地元の教育機関、文化施設、そして住民自らが実行委員会を組織し、「街育」を目的に開催されるものであり、現代美術を主な切り口にして、地域住民はもとより外部の美術ファンや関係者にも強く参加/来場を呼びかけるものだ。

一見繁栄を極め「過疎」や「荒廃」とは無縁のエリアに見える学園前。しかしその水面下では、着実に空洞化が進んでいる。空洞化はなにも学園前だけの問題ではない。少子高齢化の進む日本全国のほとんどの郊外で起こっている大きな社会問題なのである。アートディレクターとして、ここで起こりつつある「空洞(カラ)化」という現実問題に対して、現代美術家が放つメッセージを受け取り解決の糸口を探ることから、「街育」プロジェクトを動かし始めたいと感じている。

今回現代美術部門に出展する作家の多くは、関西の「郊外型二ュータウン」で生まれ育っている。あるいは現在そう呼ばれる街の中で彼等は暮らしている。まさに当事者として、「空洞化する日本」が抱える大きな問題点を、作品制作・展示という形にして、ここ学園前の住民や来場者に向けて提示されることになる。受け取る者は彼等のメッセージを検証し、今後効果的に活用することが望まれる。

現代美術の表現により、一般の人々の中に価値観の逆転が引き起こされる事がしばしばある。空洞化という一見「負」の現象を、住民が一度自分た ちの足元で起こる現実問題として受け止める事ができた時はじめて、負から正に価値観が逆転し、街の展望を、ひいては日本の未来を住民自らが計画 し実現していくことになると期待している。

■プロフィール
1959年奈良県山辺郡生まれ、奈良市在住。90年代フランスでの作家活動を経て、‘05年奈良市でGallery OUT of PLACEを開廊。‘09年以降東京支店との2カ所を拠点に、現代美術のアートマネジメントを行なっている。また、‘08年奈良における現代美術の振興と発表の機会創出を目指し、奈良アートプロム(NAP)を設立。‘10年「第1回奈良アートプロム」を開催。その後、NAP代表として奈良県委託事業「奈良町家の芸術祭・はならぁと」のアートディレクターを歴任(‘11,‘12,‘13)。